2020/05/04
【MMD-MV】ELECT【MMD-OMD10記念】
■制作するにあたって
なんかひっそりと始まった感があるようですが、今年も開催しております『俺得モデルフェスティバル』が記念すべき10回目を迎えたようなので、ひっそりと投稿。
ニコニコよ、私は帰ってきたぞ!(ほぼ2年ぶりの投稿)
■『俺得モデルフェスティバル』
2012年のGWから開催し続けているMMDイベントの代表格の一つ。
モデル作成を主体としたMMDイベントで、イベントタイトル通り「自分が作りたいから作った」というモデル展示・配布イベントです。
近年では3DCGモデルデータ配布サイトが増え、またアセットストアや販売サイトも多くあり、幾多のモデルデータがネット上に溢れかえっていますが、その中でもこのイベントで出されるモデルデータの数々は、「一体誰が使うんだ?」とか「これはありそうでなかった!」系のモデルなど、非常にノリ重視のMMDモデルデータの数々が発表されていたりします。無論、実用性の富んだモデルデータなどもたくさんあります。
イベントサイトは以下の通りです。
MMD俺得モデルフェスティバル @wiki
■そんな中に……
というTweetがあり、なんとその1日後には……
とまあ一晩でやっちゃってくれてたのでした。
ゆづきさんは、ご存知の方も多くいらっしゃるでしょうが、古参MMDユーザーの一人で、昔から多くのモデル、特に建造物系(ステージ等)を発表しているモデラーさんです。
建築デザインにも造詣が深く、理の通ったデザイニングをされる方です。昔から色々とお世話になっており、私としてはカブッPと共に昔から頭の上がらない方です。
そのゆづきさんが一晩でやっちゃってくれたので、私も一晩チャレンジを久々にやってみようということで、動画作成をしようと思いました。
また時期としては丁度、ようやく個人環境もWin10環境に移行したてだったので、各種制作環境の確認、
カメラワークなどの習作、VRM→PMXの勉強等などがあり、おんもで遊べない代わりにモニタ前で遊びを兼ねてやってみました。
■VRMとPmx
『
VRoid Studio』はpixivさんからリリースされているキャラクターメイキングツールです。まだβ版とはいえ、こんな高機能ツールを無償でリリースするとは気が触れているのではないかと思う程に素敵なツールです。
ペンタブレット+PC環境での使用を推奨しますが、通常のマウス+PC環境でもできますし、環境が適合していればスマートフォンでも遊べます。
本来は
VRMフォーマット向けのモデリングツールですが、有志によるPmxへの変換ツールもリリースされています。今回はこれを使用して、私自身が昔からアバターとして使用していた『セーラー服さん(matoさん)』をモチーフとした
VRoidでのアバターモデルを作成し、Pmx化したものを使用しています。
ただ当然ではありますが、フォーマット自体が違いますし、元々バーチャルアバター等の作成・運用(主にUnityベース)を目的としたモデルフォーマットと、MMDの(今となってはレガシー化しつつある)Pmxフォーマットは全く異なります。変換しても標準モデルのようにすぐに使える訳でも……ある意味ありました。
一発変換でMMDでの表示・運用はすぐさま可能ではありますが、やはり余分なデータや自分で修正した方が良い部分は数多くあります。これについては、時間ができたら別途記事にしていこうとは思ってます。
今回使っているモデルは、
VRoid Studio ver. 0.6世代のものであり、記事執筆時点ではVer0.9がリリースされており、更に高機能化しています。今回もVer0.9で試そうとは思ったのですが、時間の関係上見送り、昨年作成していた変換データを使いました。
本来であれば、少なくともボーン構造、できれば材質や物理系の整理・修正を行わないと、理想的な動きや作業は得られませんが、今回は変換後そのままのモデルデータを敢えて使用しました。
所謂、モーションデータの流し込みでどこまでいけるのか。また、今まで使ったことがない「
VMDサイジング」ツールを使ってみようという試みもあります。
結論だけ言うと、VRM→Pmxはコツと時間さえあればMMDでの活用もできます。
VMDサイジングツールとの併用も同様ではありますが、サイジングした後のタイミング調整と手修正(キーフレーム位置・補間)は必要です。当然といえば当然ですが、ツールで変換したとしても、等身や腕・足の長さなどが変われば見た目の動きのニュアンスも変わってしまいますので、ある程度の補正はした方が良いでしょう。
その為にも、VRM→Pmxモデルの場合は、ボーン構造・表示枠の整理(ついでに、必要の無い余分なデータの削減をしてダイエット)もした方が良いでしょう。
今回は時間制約もあり、モデルデータの修正もなければ、モーションの腕の減り込み補正は行っておりません。表情だけはいくつか手付けで追加はしました。
■MMDのカメラとカメラワークについて
投稿していなかった2年間にまったくMMDを触っていなかった訳ではなく、案件絡みでの使用はちょくちょくありましたが、個人制作としては本当に久しぶり(昨年習作を1本作ったくらい)です。
久々にMMDのカメラ練習を兼ねてRTAじみたことをしてみましたし、仮眠はしたものの勢いで半徹夜する羽目になりました。
ほんと、MMDのカメラは(申し訳ないけど)使い辛い。
基本的に必要な機能は備わってはいるものの、12年前のVer.2からほとんど進化がない機能の一つです。
もっとも、今は外部親ボーンなどを活用して自由度は高くなりましたが、配布前提としての縛りがある場合には、かなり制約が多いなと改めて感じました。
また今回はMMM(MikuMikuMoving)を一切使用せず、MMDのみでのRTAチャレンジとなりました。一体何と戦っているんでしょうね、このJCは。
MMDカメラの欠点としては……
・回転が軸別補間が掛けられない
・回転/移動共に軸別キーフレームが設定できない
・一点カメラ方式なので、目標点を固定し辛い
・視野範囲の設定ができない(極端な視野角にするとクリップしやすい)
などがあります。
余談となりますがVer2リリース前後は、カメラモーションもオイラー角計算ではなくクォータニオン計算だったり、視野角計算でのアスペクトが間違ってたりとありまして、神扱いされやすい樋口氏にもお茶目な時があった事を記しておきましょう。
素人でも分かりやすく可能な限りコンパクト・シンプルにというコンセプトであるMMDにおいて、上記の要素が必要かと言われると……必要ではあるものの、最低限でいえばできなくもないという超絶ギリギリの範囲での機能ではないかとは思ってます。この辺りのさじ加減が、樋口氏の天才的な部分ではないかなと個人的には思ってます。
そうなんです。なんとか頑張ればできちゃう範囲なのです。
今回はそんな縛りゲーみたいなMMDカメラ機能を、どこまで自分の理想に近づけられるかのチャレンジでもありました。
制作コンセプトとしては
・ステージ魅せたい
・ダンスモーションも、減り込み気にしなくて済むように派手に(カメラも)踊らせたい
・かんなちゃんカワイイヤッター!
の三点です。
動画作成する切っ掛け自体がステージ配布なので、ステージを魅せる為にも今回は特に視野角(とサイズ)を注意して手掛けました。また、視野角に合わせた
カメラワーク(これが地味に難易度高い)にも注力したつもりです。
実際のカメラと違ってCGのカメラは自由度が高く、本来ではありえないようなレンズ・ワーキングが可能です。可能ですが、それが見やすいか見辛いかというのは別問題であり、また視聴者の趣向によっても、何をもって見やすい・見辛いかが分かれるので難しい所ですね。
(最終的には、個人の好みという事になってしまいますが……)
またMMDに限らずですが、CGの場合は自動的にシャッターが入った状態ですし絞りや視野角、被写界深度なども半自動もしくは無視された状態での撮影が可能です。制作のコンセプトとして「CGならでは」にするのか「実写に近い」魅せ方をするのかによって、作り方は変わってきます。
今回はどちらかというと、できるだけ派手にCGならではの魅せ方をしつつ、目に厳しい動きは少なめに、といった感じでしょうか。それでもいつもよりは派手めに動かしているので、今回はTrueCameraLXを使って、モーションブラーを掛けつつ、60fps→30fps変換を行ってます。
出力も4K→FullHDにしましたが、それでもやはりブラーの粗さやシャッターじみた感じは軽減が難しいですね。
グラボを新調したけど、それでもやはり限界というものはあります。比較的新しいグラボを導入したから、すぐさま色々と改善できるとは限らないという好例ですね。
カメラはサイズや視野角、配置などが大事なのは言うまでもないですが、動きに関してもセオリー的なものは数多くあります。
特にMMDが初めてのCGソフトであるユーザーの方には、この辺りの知識や経験を積むための場や情報が少ないのも現状です。
カメラについては(実写・CG共に)専門職があるくらいなので、まともに記そうとすると本数冊は軽く超えるので、流石にこのエントリーでは記しません。
ただ最近、MMD動画を見る時間があったので見回ったり、自分の過去作やMMDプロジェクトを開いて見直してみた所、今回それを意識してやってみた事を記しておきます。
▼やたら動かそうとはしない事
CGは完全フィックス(固定カメラ状態)となると、「いかにもCG」っぽくなりがちです。これを避ける為にもカメラを動かす癖が無意識的にもついてしまうのが、CGカメラの厄介な所です。
基本的には、
→カメラ、もしくは被写体が動いていれば違和感は軽減できる
→移動量に注意
→移動中のサイズも注意する
という部分に注意しておけば良いかと考えます。
特に移動量は、時折派手に動いても良いですが、そればっかりだと飽きるだけでなく、非常に目が疲れやすいカメラとなってしまうので、注意しましょう。
特に被写界深度エフェクトなどを使用しない場合、CGの画は情報量が多すぎますので、視聴者の目に優しいエコな部分を作ると良いでしょう。
▼MMDのカメラは動画編集そのもの
動画編集の基本はカットで素材となるクリップをつないでいく事です。MMDのカメラも、最初から最後までワンカメ動画にでもしない限り、基本的には編集点が存在する事になります。
この編集点も非常に重要な要素ではありますが、編集点のタイミング、そして更にワンクリップの長さとテンポ感が肝となります。
今回はダンス動画なのでそれを例にすると……
→1小節ないし2小節ずつ、小節の切れ目での編集点を連続させない(同じ長さのデュレーションを連続させない)
→サイズも同様で、似たようなサイズを連続させない(例:バストショット→バストショット)
→同方向のパン・ドリーを連続させない(例:右から左へカメラを動かし、次のショットでも右から左へ移動。敢えてそれを使う編集パターンも存在するが、意味付けしないと視聴者が混乱する要因となる)
→寄ったら次は引く、右へ動かしたら今度は左へ動かす等、空間上にある被写体の位置関係を把握しやすくする
→動かしたら次は止める、止めを2連続で入れたら次は動かすなど、バリエーションパターンを工夫する
→etc...
とまぁ、一概には言えない事がたくさんあります。
一言でいえば、メリハリを付けるって事ですね。
あとはカットタイミングですが、音声波形を見ながらカットポイントを入れると、たいていはズレて見えます。人間の目はそう多くの情報を瞬間的に処理できる訳ではないので、大抵、音と画を同時に入力された場合には、画の処理の方が遅くなっています。なので、音のタイミングより先に(テンポによりますが、2~4フレームくらい画の方を先行させる。もしくは小節でいえば3拍半から4拍目辺りにカットポイントを入れる)してみると、最終的にmp4にした時に、気持ちよく切り替わる場合が多いです。
カットと確定申告は、気持ち早めに。
▼時間を空けてから再チェックする、面倒でも最初から見る
最初は思いつきのままにカメラを作っていくというのは良いのですが、再生確認時に個別のカットが満足行く結果だとしても、全体の流れ(シーケンス)で見た場合にしっくり来ない事は稀に良くあります。シーケンスは全体のストーリーとも言えるので、個別カットだけが良くても成立してなければ、視聴者に向けたメッセージが届かなくなります。
そういう意味でも、ある程度まとまった部分ができたら、面倒でも再生範囲を再設定するなどして、最初から、もしくはブロックの頭から見直す事を何度も行いましょう。これがいわゆるうっとりループ状態ですが、「これはイケてる!」と思って数度見た後は、かならずモニター前から一度離れましょう。
飲み物を取ってきてきても良いし、お手洗いに行ってもよし、数分ほど黙想しても良し、とにかく一度モニターから離れます。心を落ち着かせてから、もう一度ブロックないし全体シーケンスを見直してみて下さい。一瞬でも「ん?」と思う部分があれば、そこは修正すべきポイントとなります。
作業中は何度も繰り返し見るので、見慣れると同時に視聴者に対する言い訳みたいなものも考えてしまう事もあります。ですので、最終出力前が望ましいですが、一晩空けてから再度見直して、自分自身をもう一度「最初の視聴者」に見立ててチェックする事は非常に重要です。
■最後に
結局は時間と根気との戦い他なりませんね。
あとは程よい休憩と睡眠、何よりも食事でしょうか……。今回はRTAじみた挑戦ではありましたが、睡眠と食事タイミングが大きく狂ってしまい、この記事を書きながら「コンビニ行くのが面倒」状態に陥っています。
集中してやる事も大事ですが、程々に息抜きしましょう、というのが今回得られた教訓の一つでございました。
それでは皆様、良きMMDライフを。